乳がんヨガ指導者養成&患者さまへのヨガ環境整備

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乳がんヨガ最新情報

私は2012年に当時のLuna Works岡部朋子先生(初代BCY校長)の元で、
乳がんに罹患した姉の為に乳がんヨガを学びました。
そしてすぐに当時運営をしていたヨガスタジオで乳がん体験者向けのヨガクラスを始めました。

そんな中、2014年に私自身が乳がんに罹患。幸いにもクラスは続けられる状態でしたが、
当時の生徒さん達から励まされ、インストラクターという立場でしたが
逆に皆さんから沢山の元気をもらいました。
この時は部分切除だった為、動きにそれほど制限はなく乳がんヨガはリハビリとして
とても役に立つものだ、と実体験をもしました。
ヨガをしていたお陰か術後の経過も良く、
胸や腕周りの筋肉の回復も早かったような記憶があります。

そして2018年、2度目の乳がんの告知を受けました。
今回は両胸にがんが見つかり、姉も乳がんで遺伝性の疑いもあった為、
医師からは両胸の全摘と可能ならば同時再建を勧められました。

1度目の乳がんの告知の時はしっかりとしていましたが、
さすがに今回は頭が真っ白になり涙しか出ませんでした。
両胸を失うという喪失感、家族への想い、
これから待ち受けているだろう様々な試練・・・
ヨガをしていても人間ですから、そうした思考が頭の中を一気に占領し
暗い気持ちの日々が続きました。

実はその頃、私はBCYで指導者養成講座を担当させて頂いておりました。
まだ自分の状態をはっきりと言えない複雑な気持ちで養成講座の日を迎えました。
お集まりいただいた方はご自身が乳がんの体験者、ご家族が乳がんに罹られた方、
そして私と同じく乳がん体験者でヨガインストラクターの方もいらっしゃいました。
皆さん様々な思いで受講をして下さいましたが「乳がん体験者の為に何かしたい」
というお気持ちは皆同じでした。

そういったお気持ちを伺い、熱心に受講してくださる皆さんを拝見しながら私もまた
元気になって誰かのお役に立てる日がまた来ますように、と心の中で願いました。
ですが、両胸同時再建は前回の部分切除の時よりも体の制限と負担が多く、
ヨガを出来る日が戻ってくるまでには時間がかかりました。

エキスパンダー挿入後は最初の1ヶ月間は腕を高く上げないように、
うつ伏せや横向きで寝ること、胸に圧がかかることもしないように言われ、
動きたくても今までのように動けない憤りと、それに合わせて気持ちも
落ち込むばかりの状態が続き「もうヨガなんてしたくない」と
自暴自棄になる時もありました。

しかし、体に制限があると言っても全く動かさずにいることは勧められていません。
医師からは「自分の体は自分が一番分かるでしょうから、
無理のない範囲で身体の状態に合わせて動いてみてください。」とアドバイスされ、
その時に改めて乳がんヨガで学んできた「人がヨガに合わすのではなく、ヨガが人に合わす」
という言葉を思い出しました。

乳がんヨガは「その人に合ったヨガ」を教えるものでした。
それを思い出すまで、出来なくなったことばかりにフォーカスをし
「あれもできない、これも出来ない」と思い込んでいましたが、
もう一度乳がんヨガの教えを思い出し、自分の出来るヨガから少しずつ始めていくことにしました。
そうして、少しずつ心と体が回復してきました。

同時再建中のヨガは気を付けなければならないことも多いですが
(胸に圧をかけるような負担をかけない、うつ伏せ、横向きにならない等)
乳がんヨガは優しく体を動かすので安心です。
また、再建中は体を無意識にかばっていたりするので、
どうしても体が歪みやすくなります。
そんな時はやはり体の左右のバランスを整えてくれるヨガは
再建中にはとても適しているのではないかと感じました。

現在もまだエキスパンダーがまだ入っている状態ですが、
再建をされた方やこれからお考えの方はご存知かと思いますが
今年(2019年)7月にアラガン・ジャパン社のエキスパンダーと
インプラント回収についてのニュースがありました。
日本では保険が適用されるエキスパンダーやシリコンはアラガン社のものですので、
私のインプラントの手術は代替品が承認されるまで延期となりました。
正直、ニュースを知った時は心穏やかではありませんでしたし、
早く入れ替えたい!という気持ちでいっぱいでしたが、
これも「受け入れる」こととしてヨガの学びと捉えることにしました。
インプラントが出来るのはいつになるか分かりませんが、
これからもヨガで心と体のバランスを整えながら準備をしておこうと考えています。

乳がんヨガでは「受け入れることは否定しないこと」を学びます。
どんな状態でも受け入れてくれる場所がある、
それは再度患者の立場になった時に本当に必要なことだと痛感しました。

現在、全国に乳がんヨガを学んだ優秀な指導者が多く在籍しております。
必要とされる方のお近くにもクラスがあることを願っています。
詳しくはHP内の全国乳がんヨガ指導者名簿をご覧ください。

文責:BCY Institute Japan
川口 貴枝
乳がんヨガクラス Wellness
https://lanifussa.com/yoga-news/yoga-schedule/3010/

2019年09月27日 | 体験者の声

2019年6月、私はアメリカ、ロサンゼルス国際空港に降り立ちました。

目的は二つ。毎年開催されている国際ヨガセラピスト協会のカンファレンスに参加するため。もう一つは、ロサンゼルスのあるクリニックで行われているヨガセラピーを視察するためでした。今回はそのクリニックで行われているヨガセラピーについてご報告します。

クリニック外観
<クリニックの外観>

ロサンゼルスのサンタモニカにあるベニス・ファミリー・クリニックは、寄付で支えられている様々な診療科があります。診察・診断・投薬に加えて、食事や運動習慣の改善もサポートするクリニックです。

料理教室や毎日のようにあるヨガやエクササイズのプログラムに無料で参加することが可能です。


<クリニック内の案内板>


<運動プログラムの予定表>


<お料理教室の予定>

さらに、医療を補完するものとしてヨガセラピー、鍼、カイロプラティックが処方され、患者さんは無料で受けることができます。医師と、ヨガセラピスト、鍼灸師、カイロプラクターは、患者さんごとに会議を行っています。医師による状況説明、補完医療の要不要、何が必要なのか、目的、方法などについて、それぞれの専門家が意見を出し合います。最終的に医師が必要と判断した患者さんに対し、処方箋がだされ、それぞれの専門家によるセラピーが行われ、経過観察、最終評価まで行います。


<医療者と専門家が会議をする部屋>

今回、ヨガセラピーを受けた女性にインタビューすることができました。彼女は乳がん患者ではありませんが、ヨガセラピーを受けた感想を語ってくれましたのでご紹介させていただきます。(ご了承をいただきました)

20代の彼女は、数年前に交通事故を起こし、その際心的外傷を負い、現在心療内科を受診しています。主治医から、治療に加えてヨガセラピーを受けるように指示があり、その日が初めてのヨガセラピーでした。

彼女によれば、事故以来、車を運転する時には常に事故を恐れてびくびくし、周囲に意識を張り巡らせていて、不安で疲れてしまうそうです。後遺症で首の痛さも抱え、心の落ち着かない日々だそうです。

一度、一般のヨガクラスに参加したことがありましたが、周りの人が気になって集中できず、また他の人と自分を比べてしまい嫌な気分になってしまったそうです。それ以来、そのクラスには参加していないとのことです。

ヨガセラピーは、患者さんとヨガセラピストの1対1で行われます。場所は、落ち着いた個室で、他の人の目を気にする必要がありません。呼吸法、マントラ、ポーズ、リストラティブヨガ、瞑想などを1時間かけて行ったということです。(セラピーは、その性質上見学はしませんでした)

ヨガセラピーが行われる部屋
<ヨガセラピーが行われる部屋>

初めてヨガセラピーを受けてみて、彼女はこう言っていました。

「自分の内側に意識が穏やかに向いて、とても平和で落ち着いた気持ちになりました。穏やかなヨガのポーズや呼吸法は、意識を集中するのに役立ちました。今この瞬間をじっくりと味わい、安全であるということを感じることができました。首の痛みの感覚も、ヨガセラピーの最中は少し和らいだ気がします。ヨガセラピーをうけると、こういう気持ちになれることがわかって、とてもよかったです」

彼女は、これからも、心療内科での治療を続けながら、ヨガセラピーも受けることになっていると言っていました。ヨガセラピーによって、穏やかな気持ちや今この瞬間を味わう経験をしたことは、彼女にとって、今後の治療を続けていくうえで、強力なサポートになると私は強く感じました。

乳がんヨガでも、ヨガを通じて患者さんが自分の心の中に安心感を味わったり、落ち着きを感じたりすることが、患者さんのサポートになるでしょう。自信を味わったり、自己肯定感を養ったりすることもあるでしょう。そのような気持ちが、乳がんの治療を続けていくうえで、大きな力になると考えています。

クリニックでの患者さんとヨガセラピスト達との出会いは、これからも真摯に、乳がんヨガをお伝えしていく勇気をもらったものとなりました。
このような機会を作ってくださった方々に感謝しています。

文責:BCY運営メンバー 秦絵理子

2019年09月10日 | 活動報告,臨床情報など

日本乳癌学会が発行している
「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」が2016年より3年ぶりに改訂されました。

患者さんが納得して治療を受けるには、標準治療や治療方法について正しく理解したうえで医師と相談し自身に合った治療を選択することが重要です。

本書では、「原因と予防について」「乳がん検診と診断の進め方」「乳がんと診断されたら」「初期治療を受けるにあたって」「初期治療の後の診察と検査」「再発転移の治療について」「薬物療法について」「療養上の諸問題について」「若年者の乳がん・男性乳癌について」が章ごとに構成されており、章から更に細かく分類され全64項目にわたりQ&A方式で解説されています。
乳がんの患者さんやそのご家族が乳がんの知識を正しく知るために分かりやすくまとめてありますので最適な治療を選択していくうえでとても参考になり信憑性の高い1冊です。

ガイドラインの中で一番知りたいところではないかと思われる『食生活・生活習慣・持病と乳がん発症リスクについて』を一部ご紹介します。

===以下、本書より抜粋===

近年、日本で乳がんが増加しているのは、食生活や生活習慣の変化が大きな原因ではないかと考えられています。世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究機構(AICR)の『食物、栄養、身体活動とがん予防:世界的展望』という報告書と日本での研究結果をもとに食生活に関しては、肥満、アルコール、大豆イソフラボン、サプリメント、乳製品と乳がんの発症のリスクとの関連を、生活習慣と持病に関しては、喫煙、運動、ストレス、糖尿病と乳がん発症リスクとの関連についての回答を簡単に上げてみました。

1) 肥満は乳がん発症リスクと関連はあるか。
閉経後の女性では肥満が乳がん発症リスクを高めることは確実であり閉経前でも肥満が乳がん発症リスクを高める可能性はある。

2) アルコール飲料の摂取は乳がん発症リスクを高めるか。
1日に1杯程度のアルコール飲料の摂取(日本酒なら1合、ビールなら中ジョッキ1杯(500ml)ワインならグラス2杯(200ml)はリスク因子にはならない報告もあるが飲む量が増えるほど乳がん発症リスクが高まるのは確実である。

3) 大豆食品やイソフラボンの摂取は乳がん発症リスクと関連はあるか。
大豆食品やイソフラボンの摂取で乳がん発症リスクが低くなる可能性がある。しかいサプリメントでは証明されておらず安全性も証明されていない。

4) 乳がん予防のために健康食品やサプリメントを摂取することは勧められるか。
がん予防の観点からはサプリメントを摂取することは勧められない。1部サプリメントでは乳がん発症リスクを高める可能性も指摘されている。

5) 乳製品の摂取は乳がん発症リスクを高めるか。
乳製品の摂取により乳がん発症リスクはむしろ低くなる可能性がある。低脂肪乳を摂取している人や閉経前の人ではより低い傾向、脂肪を多く含む乳製品の摂取では高くなるとの報告もある。

6) 喫煙は乳がん発症リスクを高めるか。
喫煙により乳がん発症リスクはほぼ確実に高くなる。受動喫煙も高くなる可能性がある。

7) 運動によって乳がん発症リスクは低下するか。
閉経後の女性では、定期的に運動を行うことによって乳がん発症リスクが低くなることはほぼ確実である。

8) ストレスや性格は乳がん発症リスクと関連はあるか。
ストレスが乳がん発症リスクをたかめるかどうかは結論が出ていない。一方ではストレスを経験した女性はストレスを経験していない女性に比べて約2倍乳がん発症リスクが高くなったとの報告もある。性格と乳がん発症リスクとの間には関連はない。

9) 糖尿病は乳がん発症リスクと関連はあるか。
糖尿病の人は、糖尿病ではない人に比べて乳がん発症リスクが高いことはほぼ確実である。

詳しい説明は、ガイドラインに書かれていますのでご興味のある方は是非お手にとってみてください。

文責:髙橋かおる(BCY運営メンバー)

2019年08月25日 | 臨床情報など,関連情報
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