医療者さまへ
医療者の皆様へゆっくりとした呼吸は
安心と気持ち良さから
病気の治療に取り組んでいらっしゃる方の中には、考えすぎてしまい、自分が何かを間違ってしまったから病気になったのではないかと気にされる方が少なくないように思います。
ヨガに取り組むことで、そういった、理由探し、犯人捜しを少しお休みしていただき、気持ちを楽にしていただきたいと思っています。
それは、少しいい加減なぐらいでよい、もっと自分に寛容になってもいい、気持ちよければ細かいことは気にしなくてもいいのですよ、というメッセージです。
病気である、ない、を問わず、そのような気持ちではいられない時、私たちの呼吸はきまって浅く速いのです。
呼吸が浅く速ければ、なお緊張と不安が募り、自分にも他人にも寛容になれません。
ヨガのポーズをとる目的は身体を動かすだけでなく、そこに深くゆっくりとした呼吸を伴わせることで、善悪の判断をすることなく、世の中のいろいろな葛藤矛盾を受け入れられる緩やかさ、バランスを取り戻していくことです。
BCYが開催するヨガクラスは患者さまの今のありのままの気持ちを受け入れることからスタートします。
無心の時間がもたらすもの
ヨガセラピーにおいて一番多い誤解は「どのポーズが効くのだろう」という発想です。
実は、ヨガで大切なのは、ポーズの正しさではありません。
ポーズをとりながら、呼吸に意識を向け、深くゆっくりとした呼吸ができるように導けるかどうかなのです。
ヨガの効果があるとすれば、色々なことに無心で取り組んだ結果、「効果を期待することなく、自分の身体や内面に意識を向けられるようになる」このことこそが、薬になるのではないでしょうか。
簡単なアイヨガをやってみると、そのことがよくわかります。
手のひらを軽くこすりあわせ、そっと目の上に置きます。
この時点では、何が効くのか、何がいいのか悪いのか、などとは誰も考えていないと思います。
考えているとすれば、あたためた手のひらを目の上に置いてみると、あったかくて気持ちいいなー、ということぐらいではないでしょうか。ヨガに取り組む時が、患者さまにとってそういった時間になればと思っています。
安全に、安心して
楽しんでいただくために
乳がんの患者さまにヨガを安全に楽しんでいただくにあたり、気をつけていただきたいことは2つあります。
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腕に著しい負荷をかけない
ヨガが乳がんによいからといって、街のヨガ教室に赴き、定番のポーズだからといって、下向きの犬のポーズなどを知らずに練習することがあります。しかし実際、腕に負担がかかるポーズはリンパ浮腫のリスクを高めます。もしかしたら身体は動き、ポーズはできるのかもしれません。
でも、私たちは、できることと、安全にできることは異なると考えます。
同じように、できることと、安心してできることも異なります。
どんなポーズも、患者さまが安心して安全に取り組めることが大切であり、BCYのインストラクターはそれをしっかり学んだ上で指導にあたります。
例えば、下向きの犬のポーズは、壁や椅子に手を置いて、腕への負担を軽減したり、椅子に座って腕に負荷をかけないような形で行うことが可能なのです。
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疲れすぎるまで行わない
ヨガが良いからといって、薬と同じで飲み過ぎはよくありません。
ヨガを始めた患者さまの中には、疲れ果てるまでヨガに取り組む方が見受けられます。
お気持ちはわかりますが、ヨガの根底にあるのは自分への優しさです。
やり過ぎることなく、気持ちいいなあと思っていただける範囲内で楽しんでいただくことが大切です。
身体 + 心や呼吸を
ケアするヨガ
乳がんの方にお勧めしたいアプローチは、患者さまの状態によっても異なりますが、いくつかご紹介します。
- 不定愁訴を取り除くポーズ(首、背中、腰の凝りを解消し、呼吸しやすい姿勢を取り戻しましょう)
- 腕の可動域などを広げていくポーズ(動きやすい身体で自信を取り戻していくため)
- 足腰を鍛えていくポーズ(社会復帰はお腹に力が入ることと脚力から)
- 疲労を回復し、深い睡眠を促すポーズ(脳疲労による自律神経の乱れの回復)
患者さまだけでなく、医療者の皆さまにも、知っていただきたいヨガのアプローチはたくさんあります。
乳がんヨガ指導者養成講座はヨガの経験者でなくともご参加いただけます。
患者さまに寄り添い、安心していただけるヨガのクラスとはどのようなものなのか、ぜひ学びにいらしてください。
医療者の皆さまのご参加そして忌憚なきご意見をお待ちしております。
そもそもヨガとは?
ヨガの語源は「つなぐ、むすぶ」という意味です。何をつなぐのでしょうか。
胸の前で両手を合わせて軽くうつむいてみましょう。
ヨガでよくみかけるポーズですが、これは右手は自分の中の清らかな部分、自分が愛せるものなどのプラス要素、
対して左手は、自分の中で目を背けたいところ、自分が苦手なもの、などのマイナス要素を表しており、誰もがどちらも持っているものです。人生は矛盾と葛藤だらけで、いいことばかりではないけれど、意外と悪いことだけでもない。
ヨガが結ぶのは、人生の酸いも甘いも、ということになります。
呼吸に吸うと吐くがあるように、人生にも波があります。
されど、今生きていることが、善悪なく、唯一の答えである、という考え方そのものが「ヨガ」なのです。
医療者の皆さまのお願い
- 患者さまに、治療をサポートするケアの一つとして、ヨガをお勧めいただけると嬉しく思います。
- 私たちのメンバーが、乳がんに関することなど、正しい知識と理解を深めるために、先生方にいろいろお尋ねすることがありましたら、ご指導いただけると助かります。
- 乳がん患者さまにヨガを知っていただける機会の拡大に、どうか、お力をお貸しください。
患者さま向けの体験会、医療従事者向けのワークショップ、指導者養成講座などのリクエストをお待ちしております。