乳がんヨガ指導者養成&患者さまへのヨガ環境整備

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乳がんヨガ最新情報

ブレストケアナースセミナー 2015 でのヨガ紹介

ご紹介に預かりました岡部朋子と実技を担当します山下富久子です。本日は貴重な機会をありがとうございます。私はアメリカで高齢者向けのヨガの勉強を始めましたが、当時乳がんやその他重篤疾患の方々がリハビリや治療計画の一環としてヨガを積極的に取り入れ始めているのを目の当たりにし、やがて日本でも必要性が高まってくると予感いたしました。実際、アメリカの病院には会議室がヨガルームに改造されているところがあります。このような取り組みはアメリカではヨガセラピーと呼ばれていますが、合言葉はいつも「息さえできればヨガはできる」というものです。ヨガというと難しいポーズや特殊な呼吸法というイメージがあるかもしれません。実際そのようなものもあります。しかし、セラピーとして使われているヨガはもっとヨガの本質的なところを用いています。それは「観察」と「呼吸」そして「巡らせる動き」です。

ワーク1)
気づきや観察というと少しスピリチュアルな感じがするかもしれません。しかし実際はこんなに簡単なことだったりします。みなさん、両手を交差させ、両肩に置いてみましょう。そのまま息を吸って、吐きながら軽く顎を引きます。息をたっぷり吸って、もう一度吐きながら軽く顎を引きます。いかがでしょうか。これだけでも気持ちが落ち着くのがわかると思います。実は、これは5歳の子供でもできることです。私の息子にも時々落ち着かせたいときにこうするのですが、最近では私が怒り始めると息子が「ママ、こうでしょ」と逆にたしなめられる始末ですが、5歳の子供でもできることを私たち大人が忘れ、不安だ、大変だと言っているような気がします。このように、心のケアはいつも呼吸から始まります。なぜなら私たちは不安なときや心が警戒状態にあるとき、決まって速くて浅い呼吸をしているからです。

ワーク2) 次に、猫背の姿勢を取ってみましょう。
猫背の状態で、丹田といわれるおへその奥に意識を向けようとします。すると、おへその奥に力が入らないのがわかると思います。一方、姿勢を正していただきおへその奥に意識を向けようとすると、今度は入ります。このように、胸の前が硬くなったり、猫背になることは、自信を失い、心を閉ざし、コミュニケーション力を落としてしまうという点で、社会復帰にとっては致命的なことです。ヨガでは首の前と胸のあたりはコミュニケーションを司る部位と考えられています。乳がんの患者さんのリハビリにおいて、まさに患部である胸の前をどうやって開いていくかが問われていきます。

ワーク3)
腕を顔の前で合わせます。ここで大切なのは、ぴったり合わせる必要はないということです。その日の体調によって、どこまで腕を閉じれるかが違うと思います。同じように、どこまで開けるかも違うと思います。これは、ゴールとスタートがどこにあるか、ではなくて、今日の自分の行けるところから行けるところまで行って戻ってくるということが大切なのです。そして、みなさん、たった数往復しただけで結構腕が疲れているのではないでしょうか。自分の腕の重みを維持するというのは結構な運動な訳です。だけど、ヨガの特徴は、自分の体の重みで十分運動ができるということです。リンパ浮腫の予防には、重いものを持たないようにするといわれる反面、リンパの戻りをよくするためにある程度筋肉をつけておきたいということが言われます。実際そのさじ加減が難しいと思われている訳ですが、誰かの腕ではなく、自分の腕の重みでしっかり運動できるのもヨガの特徴です。

ワーク4) 身体に酸素を取り込むためにこのような動きをすることもあります。Cat & Cow 猫と牛のポーズといわれるこの動きはヨガ教室では四つん這いで行われるのが一般的ですが、乳がんリハビリヨガでは椅子に座ったまま行い腕に負荷をかけないようにします。息を吸って胸をそらし、息を吐きながら背中を丸めます。このときに、背骨だけをくねらせるのではなく呼吸に合わせて骨盤を前後にコロンコロンと転がしながら行うことがポイントです。このポーズは、ヨガのクラスが和気藹々としてくると、次のように行ったりもします。先ほどのように肩に手をかけ自分を抱きしめながら息を吐き、自分にありがとう、自分にお疲れさま。息を吸いながら両手を大きく広げ、支えてくれるみんなにありがとう。息を吐いて自分にありがとう、こうやって呼吸に合わせて腕を動かすことで、その日の自分の腕の可動域に合わせ腕の付け根を気持ちよくストレッチすることもできます。

そして実は社会復帰に必要なのは足腰の力です。長い間療養生活を送っていると足の内側の筋肉が衰えていきます。そこで、このような動きをお勧めしています。

ワーク5)
足を開いて、つま先は斜め45度、息を吸いながら両手を大きく広げます。息を吐きながら腰を落とし、肘を曲げます。息を吸って、身体に大きく酸素を取り込みながら、息を吐きながら腰を落とします。さて一旦皆さん、自分の足幅を調整してみましょうか。腰を落としたときに収まりがいい足幅を探してみましょう。人と違っていいのです。自分が快適な足幅を探し、もう一度行ってみましょう。

たった3-4回呼吸するだけで、少し汗ばんで来ないでしょうか。この動きは、足の内側や肩甲骨周りの筋肉を連動させて動かし、すぐに身体が温まります。しかも、腕の上げ方にポイントがあります。普通のヨガは腕を頭上にあげるものが多く、これがあると乳がんの患者さんは「上がらない腕」に挫折感を感じてしまいます。しかし、腕を斜め上にあげることによって、今日自分が上がるところまで腕を開いて行ってもらうことができます。今日はこれぐらいかもしれないし、明日はこれぐらいかもしれない。もしくは、両方の高さは異なるかもしれない。それでもいいんです。

ワーク6)
さて、少し身体を動かすことに慣れてきたところで、街のヨガ教室に参加してみようかな、というときにアドバイスするのが、腕に負荷をかけないように、ということです。たとえば、このポーズ、下向きの犬のポーズというヨガ教室の定番ポーズです。脇から背中にかけてが気持ちよく伸びます。しかしこれでは腕に体重がかかりすぎ、リンパ浮腫のリスクを高めてしまいます。ですので、術後の患者さんにはこのように椅子の背もたれにつかまった簡略形をお勧めしています。これであれば腕に必要以上の体重がかかりません。その状態で、背中から脇、腕の付け根を気持ちよく伸ばすことができるのです。これはもちろん、壁に向かってやっても構いません。壁で行うメリットは、高いところに手をつくことによってより稼働域が狭い方でも
始めることができます。

でも今までご紹介したポーズができるのは、ちゃんと元気があるということが前提です。患者さんの中にはこれくらいのことをするのもしんどいという心の状態の方もいることでしょう。そんなときは道具の力を借りてポーズをとることもあります。

ワーク7) (リストラティブヨガ)
ボルスターといわれる体の幅ぐらいの抱き枕があります。これに背中を預け仰向けになることによって、自然と胸が開きます。ただここで大切なのは、腕の付け根が痛くならないように枕などでしっかり支えることです。このポーズ、とても矛盾に満ちたポーズで「開いているのに閉じている」ポーズです。胸や体を開いているのに意識はどんどん自分の内面に向かっていきます。呼吸が次第にゆっくり穏やかになるにつれ、日頃から目を背けようとしてきたことや、本当の自分の願い、自分がどうやっていきたかったのか、いていきたいのか、自分と対話する時間を確保することができます。

一方、なかなか疲れが取れないときには椅子の上に乗せ、腰の下に枕を置いて、足の疲れが傾斜を通ってて
鎖骨リンパに戻ってくるように配置します。このとき手は万歳をしますが、腕が浮いてしまうようなときはさらにそこを枕で支えます。足の古い血やリンパが心臓や上半身に戻りやすくなることによって、よく眠れれるようになります。

それから、ヨガではひねりのポーズは気分転換やリフレッシュによく使わわれます。私たちは不安なときやイライラしたときは脇の下が縮むといわれています。するとどうなるかというと、肝臓や腎臓に新鮮な酸素や血液が運ばれるのが妨げられます。ですので、無理せずひねりのポーズを行いたいのですが、ボルスターを使ってこうやって休みながらひねることもできます。こうすると、骨盤とろっ骨の間に空間が生まれます。

このようなポーズは実は、病院や自宅にあるもので十分可能なのです。各地の病院でスタッフの方々と実践練習を行う機会がありましたが、病院には枕やバスタオル、そしてリハビリ用の足首や手足に巻く砂のうなどがあります。たとえば、どうしても不安で気分が晴れないという患者さんに深い腹式呼吸で気持ちを落ち着けてもらうために、仰向けになっていただきお腹に枕を乗せ、その上に砂のうや重い本などを乗せて呼吸をしてもらいます。すると呼吸をするたびに枕が動きます。動く枕に意識が向かうと、呼吸はよりゆっくりとなっていきます。

私がこのようなヨガの先生の養成を始めて4年になりますが、47都道府県に患者さんが安心して通えるヨガクラスの設置を目指しています。そして地方によっては医療機関で勉強会や体験会、実際のクラスが行われ始めています。たとえば東海大学の病院では看護師さんがクラスを持って、体を動かしたい人のクラス、少しリラックスしたい人のクラス、というような二部構成で行っています。中には看護師さんたちの気分転換にヨガを福利厚生や部活動に取り入れているところもいらっしゃいます。医療現場の皆さんがリラックスすることで、患者さんたちも安心して心を開きやすくなるかもしれないとおっしゃっています。実際にやることは、今皆さまに体を動かしていただいたような簡単なポーズです。ヨガの経験が豊かである必要はありません。

私がこの乳がんリハビリヨガに抱いている希望の一つに、私の養成講座に参加する方はヨガの先生たちだけではないということがあります。医療や福祉に関わる方々や、乳がんの体験者さんたちもいます。それを同じような体験をした方々に伝えたいと、活動を始めている方が増えてきています。

実は最近、私のウェブサイトに乳がんリハビリヨガを教えられる全国の先生のリストを公開いたしまました。残念ながらまだ47全ての都道府県をカバーするに至っていませんが、同じ地域であれば勉強会に駆けつけてくれると思います。もし、患者さんたちにヨガを体験する機会を持ちたい、看護師さんたちの勉強会をしたい、ということがございましたら、私あてにご連絡をいただくか、リストを検索していただけましたらと思います。また、乳がんに限らず全てのがん患者さんを対象にしたヨガクラスの先生たちが関東でネットワークを作って活動しています。こちらはがんクラス向上委員会で検索をしていただければと思います。

今日はお昼休みの貴重な機会をいただきましてありがとうございました。
最後に胸の前で手を合わせ、隣近所の方々とにっこりご挨拶をしていただきおしまいにさせていただけたらと思います。ありがとうございました。

           

(注)本記事はBCYの前身であるルナワークスの乳がんヨガHP当時のものとなります。
2015年09月7日 | 講演情報など
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