2019年6月、私はアメリカ、ロサンゼルス国際空港に降り立ちました。
目的は二つ。毎年開催されている国際ヨガセラピスト協会のカンファレンスに参加するため。もう一つは、ロサンゼルスのあるクリニックで行われているヨガセラピーを視察するためでした。今回はそのクリニックで行われているヨガセラピーについてご報告します。
<クリニックの外観>
ロサンゼルスのサンタモニカにあるベニス・ファミリー・クリニックは、寄付で支えられている様々な診療科があります。診察・診断・投薬に加えて、食事や運動習慣の改善もサポートするクリニックです。
料理教室や毎日のようにあるヨガやエクササイズのプログラムに無料で参加することが可能です。
<クリニック内の案内板>
<運動プログラムの予定表>
<お料理教室の予定>
さらに、医療を補完するものとしてヨガセラピー、鍼、カイロプラティックが処方され、患者さんは無料で受けることができます。医師と、ヨガセラピスト、鍼灸師、カイロプラクターは、患者さんごとに会議を行っています。医師による状況説明、補完医療の要不要、何が必要なのか、目的、方法などについて、それぞれの専門家が意見を出し合います。最終的に医師が必要と判断した患者さんに対し、処方箋がだされ、それぞれの専門家によるセラピーが行われ、経過観察、最終評価まで行います。
<医療者と専門家が会議をする部屋>
今回、ヨガセラピーを受けた女性にインタビューすることができました。彼女は乳がん患者ではありませんが、ヨガセラピーを受けた感想を語ってくれましたのでご紹介させていただきます。(ご了承をいただきました)
20代の彼女は、数年前に交通事故を起こし、その際心的外傷を負い、現在心療内科を受診しています。主治医から、治療に加えてヨガセラピーを受けるように指示があり、その日が初めてのヨガセラピーでした。
彼女によれば、事故以来、車を運転する時には常に事故を恐れてびくびくし、周囲に意識を張り巡らせていて、不安で疲れてしまうそうです。後遺症で首の痛さも抱え、心の落ち着かない日々だそうです。
一度、一般のヨガクラスに参加したことがありましたが、周りの人が気になって集中できず、また他の人と自分を比べてしまい嫌な気分になってしまったそうです。それ以来、そのクラスには参加していないとのことです。
ヨガセラピーは、患者さんとヨガセラピストの1対1で行われます。場所は、落ち着いた個室で、他の人の目を気にする必要がありません。呼吸法、マントラ、ポーズ、リストラティブヨガ、瞑想などを1時間かけて行ったということです。(セラピーは、その性質上見学はしませんでした)
<ヨガセラピーが行われる部屋>
初めてヨガセラピーを受けてみて、彼女はこう言っていました。
「自分の内側に意識が穏やかに向いて、とても平和で落ち着いた気持ちになりました。穏やかなヨガのポーズや呼吸法は、意識を集中するのに役立ちました。今この瞬間をじっくりと味わい、安全であるということを感じることができました。首の痛みの感覚も、ヨガセラピーの最中は少し和らいだ気がします。ヨガセラピーをうけると、こういう気持ちになれることがわかって、とてもよかったです」
彼女は、これからも、心療内科での治療を続けながら、ヨガセラピーも受けることになっていると言っていました。ヨガセラピーによって、穏やかな気持ちや今この瞬間を味わう経験をしたことは、彼女にとって、今後の治療を続けていくうえで、強力なサポートになると私は強く感じました。
乳がんヨガでも、ヨガを通じて患者さんが自分の心の中に安心感を味わったり、落ち着きを感じたりすることが、患者さんのサポートになるでしょう。自信を味わったり、自己肯定感を養ったりすることもあるでしょう。そのような気持ちが、乳がんの治療を続けていくうえで、大きな力になると考えています。
クリニックでの患者さんとヨガセラピスト達との出会いは、これからも真摯に、乳がんヨガをお伝えしていく勇気をもらったものとなりました。
このような機会を作ってくださった方々に感謝しています。
文責:BCY運営メンバー 秦絵理子